よく見ればヌートリア

自分用の記録

5.30〜31 「今夜はオンライン飲み会デス」

 

5.30、31
オンライン演劇

 

 

デスゲームモノって、おもしろいよね!(唐突)

成功か失敗か、生か死か。
究極の二択の前に立たされた時、人間の仮面が外れて本性が見える。密室の中の究極の駆け引きと会話劇。たのしいよね!
でも、それがたのしいのは多くの場合、わたしたちが一番距離の遠い観客であるからだとわたしは思う。ゲームは登場人物の中だけで完結され、こちらにはなんの行動を求められることもなく、ただぼんやりと見ているだけでいい。
でも、それがもし、こちら側にも「役目」があるとしたら?一体、どうだろう?

 

仮面と匿名に守られたオンライン飲み会。
参加者たちは素性を隠して参加する。
訳知り顔なのは怪しいバーテンダーだけ。
それだけでわくわくしてしまう。

 

この作品は、そんな怪しいオンライン飲み会の中で起こる密室のサスペンスホラーだった。
わたしたちはその観客、いつも通りそれを画面の向こうから、のんびり見守っていたらいい──と思っていたのだけど、そうじゃなかったんだよなあ!!!!(苦)


この作品において、わたしたちは「観客」であり「目撃者」であり「当事者」だった。ネタバレを防ぐために具体的に何をするかは言えないけれど、ひとつ、選択を迫られる、とだけ書いとくね。

選択をすると言うことは、何かを捨てると言うことだ。選ばれた選択肢の裏には、必ず選ばれなかった選択肢がある。敗者なき勝者は存在せず、拾われたものの反対側にはいつも捨てられたものがある。
おもしろいよなあ…(2回目)

 

何かを選び取ったわたしたちは、その瞬間に紛れもない「当事者」になった。
あるシーン、とある登場人物がこちら側に向かって叫んだ台詞でわたしはハッとして、ゾッとした。彼らはわたしたちの存在を認知している。わたしたちは物語の外の存在ではない。
冒頭でも言いましたが、わたしたちがどんな物語でも結果的に楽しめてしまうのは、それがわたしたちにとって「絶対に交わらない、遠い世界で起こっていること」だからなんですよね〜って思うんですよ。恐ろしいモンスターパニック。凄惨なサスペンス。もしくは、不気味なホラー。
その中の敵が脅かすのは映画やドラマであれば登場人物であり、ゲームならばプレイヤーの操るキャラクターに他ならない。こちらには絶対に干渉してこない。間違った選択肢を選び、失敗しても、こちらを責め立ててくることはない(特にゲームであれば)(大体リセットできちゃうしね)
わたしたちとその世界には、常に絶対に乗り越えられない壁があるのだ。

 

でも、たまーに、その本来ならば「絶対に乗り越えられない壁」を乗り越えてくる作品がある。
わたしはそんな作品が好きだ。めちゃ好きだ。だからこの作品も好きだった(結論)
さっきも言ったある登場人物の台詞。声が割れてしまうほど大声で、尚且つ力の入った口調に詰られて、「あ、これわたしただの観客じゃねえんだな?」と思った。わたしたちには役目がある。与えられた役目をこなし、その結末を見届けなければならない。「なにかを選んだ」者の責任として。
それが最高に面白くて、ハラハラする!

 

話は変わりますが、わたしは日を跨いで二回この作品を見ました。そうすると、自然に見えてくるものがある。結末を知っているからこそ、気づくことがある。
些細な台詞。一度目では聞き取りづらかったあの言葉。表情。その他いっぱい。
これが木下半太さんの魅力なんだな〜としみじみ思う。一度目も疑いながら見たけど、それを見抜くことができなかった。悔しい〜!
でも二回見るとそれが一気にクリアになる。
あの言葉はつまり、ああ言うことなんだなって。

 

あの人はきっと、気づいてほしかったのだ。ずっとずっと。自分の存在に。自分の考えに。
それが二回見るとこれでもかってくらい伝わってきて、悲しかった。もしかしたら、最後の二択の前で、ずっと助けを求めていたのかもしれない。ありとあらゆる手段を使ってサインを出し、その結果として彼はひとつの答えを導き出した。わたしたちと同じ。何かを捨てて、何かを取った者。
もしあの時、あの人があの人(ネタバレ防止だよ!ごめんね!)を救ってあげていたら。
きっと違う道もあったんだろうなと思うけど、それはもう叶わない。過ぎた話だから。道は選ばれてしまったから。
選ばれた道を、引き返すことはできないんだよなあ。呆気なくて、悲しくて、あまりにもつらい。でも、それがたぶん、あの人の人生なのだ。

 

なんかさあ…深読み大好きオタクだから色々考えてしまってね、あの人はきっと、今まで誰かに傷つけられ、奪われ、見捨てられてきた人生だったのかなあ、とか。とか。
あまりにも身勝手な話でもあったけど、どうしてもそれを考えてしまう。で、うるっとくる。
あの人がよく口にしていたと言う言葉は、もしかしたら、自分に言い聞かせていたのかもしれないなあ。

 

で、そんな人生と存在を取り巻く人々。
素晴らしかった…!まさに熱演。
間違いなく、演者である皆さんの力の籠もった演技であの物語は完成したのだと思う。

 

特に凄いなと思ったのは、曽根役の西郷さん!
今までほんとにちょっとだけ、何本かこの方の出演作を拝見したことがあったのだけど、どれも優しげで、でもちょっと抜けてて、それがコミカルで憎めない役が多かった。
でも今回の曽根は、とにかく得体も底も知れず怖い!
極端に瞬きの少ない目は真っ黒でどろっどろ。何を考えているのかわからない。そんな目をする人が凄く好きなんですよね〜。
わたしは台詞以外、表情や仕草で演技をする役者さんが大好きなんですが、特に「目」で演技をする人が好きで好きで…目は口ほどに物を言う、まさにその通りだと思う。
例えば恐ろしいサイコパスやめちゃくちゃ病んでる人が、きらっきらした目をしてたらン?って思いません?いやそれはそれで不気味で怖くてめちゃくちゃ好きだけど。
でも曽根の目は真っ黒だった。もちろん照明なんかもあるんだろうけど、それにしたって真っ黒。圧倒的な説得力があった。好きだな〜〜〜。

 

そして真相に関わるあの方。詳しいことは何も言えない。でも、凄かったとだけ言っておく。
序盤の柔らかな雰囲気から、一転してあの雰囲気。西郷さんの話とも被るけど、目。あの目。目!!!!
凄まじすぎた。登場した時のオーラが凄い。でもただひとつ、とあることについて語る時だけ、昔を懐かしむような、それでいて全てを諦めたような、そんな表情になった。それが凄い。こちらの胸に、確実に傷跡を残してくる。
ほんとに、ほんとにさあ…ありがとうございますとしか言いようがない。本来ならば存在しないはずの、絶対に交わらないはずの、あの人がそこにいた。自分はそれを目撃した。あの瞬間、そんな気持ちになった。

 

もちろん、他の方も全て!
大雑把な言葉で申し訳ないですが、本当に素晴らしかった。あの画面越しのオンライン飲み会で、彼らはみんな生きていた。与えられた過酷な運命に抵抗したり、苦しんだり、こちらに訴えたりしながら、確かにその時間を生きていた。
はあ…最高…(最高…)

 

ぜひとも色んな方に見てもらいたかったあのオンライン飲み会!
が、なんと!これがドラマでも見られるそうですよ〜!(えーっ!)
みんな見ようね!!!!!!

 

しかしあの飲み会、参加したくないな…お金は欲しいけど…………(結論)