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自分用の記録

【感想】激富2021「End of the day〜あすくる〜」(激富/GEKITONG)

 

 


「明日は地球最後の日です」

と言われたら?さてどうする?

 

最後の日、最後の瞬間って言うのはいつも唐突に訪れる。友達にさよならまたねって手を振った次の瞬間に事故に遭うかもしれないし、家族におやすみって言ったっきり次の朝は来ないかもしれない。もしかしたら夜のうちに隕石が地球に降ってきて、世界の全てがあっけなく消えてしまうかも。まったくありえないようでいて、決してありえないことではない。


激富2021「End of the day〜あすくる〜」見てきたよ!


激富さんの本公演を劇場で見るのはこれが二回目でした。前回は2019年の「VITAL MAX」。笑い有りダンス有りシリアスで重い展開有り、とにかく数時間の中に色んな要素を詰め込んだエンタメ舞台と言うのがわたしが持っていた印象。
今回の「End of the day」も同じく色んな要素を詰め込んで、例えるならまさにジェットコースター。ついでにこっちの感情もジェットコースター!


公演1か月前にまさかの演目変更で、キャストさんも2チームに分かれて、本当に波乱ばかりの状況の中で大変だっただろうなあ、と、わたしには推測することしかできないのですが、だけどそんな大変な状況を吹き飛ばすような作品でした。楽しかったー!

 

わたしが拝見したのはAチーム4回とBチーム1回の計5回。推しが出ているのがAチームだったのでAチームばっかり見ていたのだけども、今になってBチームももっと増やせばよかったなあと思ってしまうなあ。Wキャストならではのキャラクターに対する印象の違いは勿論、細かな設定が変わっていたりして楽しかったです。
そもそもわたしはWキャストと言うか複数キャストの作品が好きなんだけど、その魅力がこれでもかってくらい詰め込まれていて、ほんとに1か月で完成させたの?これを?って正直ビビってしまった。同じ脚本、同じ人物でも、誰がやるかでこちらが受け取る印象はガラッと変わる。キャラクターを通じて役者さんの解釈や思考が伝わってくるようで、それがとてもわくわくする。
あーーーーッッッもっと見とけばよかった!!!!!(2回目)

 

そう言う後悔はとりあえず置いといて、まずあらすじを公式さんの特設サイトより引用させて頂きます。

 

国際宇宙ステーションが謎の爆発…。
そんなある日、ほのぼのと地元で便利屋『週休二日・フレックス』を営む『小野信太郎』の事務所に売れない芸人『相田優佑』が飛び込んで来る。
『今夜19時からの漫才ステージに、相方として出演して欲しい!』
口車に乗せられ、まんまと引き受けてしまう信太郎。地方商店街での、お笑いステージに出演することに!?
優佑 『明日は地球最後の日です。』
静まり返る会場。慌てる運営スタッフ。観客はスマホで動画を撮り始めた…。
《行動しなけりゃ、始まらない!》
全世界を巻き込んだ怒涛の1日が、幕を開ける!!!

引用元:公演特設サイト

 

明日には地球に隕石がぶつかって、世界は終わってしまう。そんな危機的も危機的な状況の中で、色んな人たちが出逢って物語が加速していく。過去の因縁、後悔、絆、愛、たくさんのものが交わっていく。
主人公たちが騒動の中で出逢う人々にはそれぞれに色んなドラマがあって、群像劇のようにそれが交差していくのが楽しかった…!そしてその人々が皆とにかく個性的で魅力的。腹に読めない何かを抱えている人、取り返しのつかない道を選んだことを心のどこかで悔やみ続ける人、たったひとりの為に突っ走る人。
「地球最後の日」、そんな極限の状況の中でこそ、それぞれの持つストーリーが浮き彫りになっていくのです。

 

以下特に印象に残った登場人物をペアに分けて少し感想を述べさせて下さい。
(あくまで個人の所感だよ!個人の!)

 

 

小野信太郎&相田優佑
(風太さん&中尾周統さん)※シングルキャスト

元々は便利屋さんと依頼人として出逢ったふたり。だけど話が進むにつれてどんどん相棒感が増してくのがほんとにいい…!
飄々としている優佑はなかなかその真意が見えなくて、信太郎はそんな優佑に振り回されっぱなしってイメージ。
だけど振り回される信太郎もただ流されるだけじゃなく、「そう言うの嫌いじゃないんだよなあ」って言いながら一緒に首を突っ込んでしまうのがもう人の良さが滲み出ていて、まさしく正しい主人公〜!
優佑と出逢ってなし崩し的に騒動に巻き込まれた信太郎が自分の過去や後悔と向き合い、止まっていた時計をもう一度動かす姿がめちゃくちゃ熱い。世界の「明日」を守るための行動は、信太郎の過去の清算でもあったのだ。そして最初は凸凹だったふたり優佑がどんどん相棒に等しい存在になっていくのが、なんかもうバディモノのドラマを見ているようで…9時からの枠でやってほしい…。
最後の最後まで笑いを忘れない姿、これこそ希望に溢れたエンタメ…!って感じで本当に最高でした。見てるこっちはもうふたりにすっかり愛着が湧いてしまってるので、緊迫感溢れる場面でも変わらずそんな風にいてくれることがほんとに有り難かったです。本当に、ただただ希望。いつまでもああやって、ふたりで馬鹿やっててほしい。そうやっていてくれたら、いつでも明るい明日を迎えられる気がします。
ラストシーン、俯いてからパッと勢いよく顔を上げて大きく叫ぶ優佑がとにかく力強く、その一瞬で完全に圧倒されてしまいました。と言うか中尾さん、表情も、軽やかで食えないような喋り方も、潜入中の緊迫感のある雰囲気との二面性もほんとに魅力的で、他の誰でもない、「相田優佑」と言う人間がここにいる!と思った。

ちなみに一番好きな動物あるあるネタはキリンです。ライオンキング好きすぎ。風太さんの引き出し凄い。

 


シャーク小山&田中剛
(Aチーム:牛窪航平さん&小川惇貴さん)
(Bチーム:閏井塁さん&柴田賢さん)

一番泣かされたよね…。
道を誤ってしまった苦しさと悲しみと、そこから取り返しのつかない展開を生んでしまうやりきれなさ。個人的な嗜好なんだけど、「誤った道を選んでしまって、だけどどうにもならずその道の先で苦しみながら生きる人」にめちゃくちゃ弱いから、なんかもう駄目だった(駄目だった)
Aチームの牛窪さんの叫びがめちゃくちゃ好きで…「誰が行くかあぁあぁあ!」のめちゃくちゃ力が篭った叫びとか(かー!じゃなくて、かあぁあぁあ!)(伝わらない)、「もうできねえんだよ…もうできねえんだよ!」の噛み締めて自分に言い聞かせるような言い回し、ほんとに心に刺さってグサグサにやられた。ほんとに初舞台なの…?
Bチームの閏井さんは牛窪さんより大人だからこそ道を誤ってしまったやりきれなさが凄いし、そこから生まれる悲哀とか葛藤が辛すぎて、どうして…なんでこうなった…ってめちゃくちゃ考えてしまった…。あと凛として凄みがある一方で、細やかな表情や声色から心の弱さが滲んでいる気がして、それが凄く人間らしくて素敵でした。物凄くドラマを感じる。
対する田中さん役のお二人はこれまた違いが顕著で、小川さんはずしっと貫禄があり、柴田さんはお茶目で憎めない年長者って感じで、その個性が凄く面白かったです。そしてお互いの小山とのバランスが凄くいい…!若さの溢れる牛窪さんの小山には父親のように広い懐で導く小川さんの田中さんがしっくりくるし、大人の閏井さんにはお茶目でたまに振り回しながらも優しく見守る柴田さんの田中さんが凄くぴったりだった。
道を間違えても、そしてその道を引き返せなくても、また新しい道を探して走って行けばいいんだよね。そう思わせてくれる希望があって、登場する度心を刺され、握られるふたりでした。明確にどうなったかが描かれていないからこそ色々と想像できる。小山には世界取ってほしいし、その時には絶対田中さんに隣にいてほしい…。テッペン取ってくれ。

 


森永富雄&明治樹里
(Aチーム:川上雅人さん&RAMUさん)
(Bチーム:横尾龍治さん&まえだゆかりさん)

か、かわええ〜〜〜〜〜〜!(感想)
緊迫感溢れるシーンも多い作品の中で、始終癒しと笑いを提供して下さったペア。あまりに面白いロミオとジュリエット、否、トミジュリ。両チームともふたりが出てくるとパッと一気に舞台が明るくなって、毎回にこにこしながら見てしまいました。ほんとに可愛いんだわこれが…。
このペアも違いが凄くて、例えるならAはキラキラ可愛い少女漫画、Bはスタイリッシュだけどちょっともどかしさのある女性向け恋愛漫画、みたいなイメージ。照明の当たらない舞台の端、Aはずっと抱きついたりエンドレスいちゃいちゃしてる一方、Bは手も繋げない、目も合わせられない。どっちも可愛い。そしてその空気感や解釈もきっとそれぞれのおふたりが作り上げてきたんだろうなあと考えるとほんとに尊いぞ。
Aの富雄くんの川上さんはまあ、推しなので、語ると長くなるし敢えて多くは語らないのですけれども、圧倒的な勢いの合間から見え隠れするナイーブさとか気弱さが凄くよくて、全部ひっくるめて愛されキャラだなあと思いました。とにかく表情がくるくる変わって感情が豊か且つわかりやすく、思い込んだらそこしか見えない!みたいな甘さや感情の浮き沈みも強め。反抗期なんです!の言い方が拗ねまくってて笑う。そうだね、反抗期だね。
その分後半での自信がついたと言うか背筋が伸びた姿にめちゃくちゃ成長を感じて感動してしまいます。気弱で意気地なし、だけど常に全力、常に一生懸命。樹里ちゃんを好きだって気持ちだけでなんでも出来る。
役者さん的に新鮮だなあと思いつつ、川上さん自身と重なるところもあって凄くハマってらした。推し凄い!(多くを語ってる…)
Bの横尾さんは見た目がとにかくスラッとスタイリッシュで、だけど繊細そうないかにも今時なお坊ちゃん。派手な柄シャツに蝶ネクタイ似合ってたな〜。
川上さんほど癖は強くないんだけど、それがまたちょっと弱々しくて可愛いんです。優男っぽい端正なお顔もあのどうしようもない情けなさとのギャップになってて素敵。じれったくて奥手そうで、なんと言うか、大雑把な表現をしてしまえば、残念なイケメン…。そしてそんな彼が綺麗なお姉さんみのあるまえださんの樹里ちゃんと並ぶと年上のお姉さんに一生懸命恋する年下の男の子っぽさが生まれる上に、更にそんな樹里ちゃんに振り回されてそうな雰囲気があって最高です。ただこの日は席がちょっと遠かったので、細かい表情とかまで見きれなかったのが惜しい…!双眼鏡持ってけばよかった。
樹里ちゃんはAのRAMUさんはとにかくキュート!めちゃくちゃ可愛い!「次はブランコ乗りたいぞ♡」の、ぞ♡とブランコを指差す仕草の可愛いさと言ったら…。そもそもあの高い位置でのツインテが似合う女の子、可愛くない訳がない。いかにも守ってあげたくなる可愛さがたまらないんですが、同時にお嬢様らしいおしとやかさや芯の強さがしっかり備わってて、そりゃ恋してしまうわと…。
Aのトミジュリは体格差や身長差が凄くて一歩間違えたら恋人より兄妹に見えてしまう可能性だってあるかもしれないのに、全く違和感なく恋する男女なのが凄いなあと思いました。おふたりの作り込みに拍手しかない…。
Bのまえださんはとにかく綺麗なお姉さん〜!と言う印象。落ち着きもあって、だけどちゃんと可憐さや無邪気さもある。一言では語れない不思議な魅力の詰まった女性でした。そしてとにかくBはダンス!ダンス!!白いブラウスにひらひらの淡い色のスカートをひらめかせながら踊るお嬢様、めちゃくちゃかっこいい。下手すれば富雄くんを守ってさえしまえそうな強さがある。
まえださんや閏井さん、あとB島崎役の増成さんもそうなんですが、普段ダンスをされてる方って体を使っての表現と言うか、身のこなしとかががやっぱりめちゃくちゃ綺麗だよなあ…と凄く思います。何より滑らかな動きに見惚れてしまいました。そのかっこよさでずっと富雄くんを引っ張って行ってあげてほしい。
「君は僕の太陽なんだ」。富雄くんの台詞。
ただただ真っ直ぐで青臭い言葉なんだけど、どちらのチームも凄くそれを感じるふたりでした。可愛くて優しい樹里ちゃんは太陽で、そんな太陽が隣にあるから富雄くんは怖くても弱くても歩いていける。恋愛が主軸ではない物語に入る恋愛要素って個人的にウーンってなってしまうことも多いんですが、このふたりは一切嫌味なく素直に応援できてしまえる存在でした。
可愛い恋人たちが、明日も幸せでありますように。結婚式呼んでくれとは言わないから年賀状くれな!(?)

 


佐々木仁志
(Aチーム:和泉有真さん)
(Bチーム:中聡一朗さん)

ペアではないんですが、めちゃくちゃ刺さったから語らせて!(語らせて!)
今回の悪役である佐々木。あらゆる手を使い、頭も力も使って目的を遂行しようとします。
とにかくもう悪い人。めちゃくちゃ悪い。鮮烈で鮮やかなまでの悪。だけど見ているこちらにはどうしようもない程魅力的に見えてしまいました。
Aの和泉さんはどこかインテリ感の溢れるヤクザ。立ち振る舞いも、肩掛けのジャケットもとにかくスマート。だけど静かに淡々と吐き出される台詞が逆に怖くて、更に声を荒げた時とのギャップで恐怖感が凄い。じっくり罠を張る頭脳派のサイコって感じ。高笑いするシーンや「撃った!撃った!」のシーンから滲み出る狂気が最高です(大事なことなので4回繰り返すのもキマッてる感あっていい)
優佑に「なんのことだ?」とシラを切るところも本当に無感情でいいし、煙草片手に小山と田中さんの再会を見つめる姿も「あ、この人マジでくだらないと思ってるんだ」って思って、得体も底も知れずじわじわ怖くなる。かと思えば小山に土下座させたりするし、気に入らないって理由で人を処分しようとしたりもする。そして淡々としたイメージがあるからこそ、クライマックスの究極の感情の発露が鬼気迫っていて圧倒される。気持ちいいくらいの外道で悪役でした。好き…!
Aの和泉さんが静ならBの中さんは動。和泉さんがインテリヤクザなら、中さんは武闘派ヤクザ。声も大きく威圧感があって、中さんはじわじわくる怖さと言うよりもストレートにこの人怖い!と思わせてくれる佐々木さんでした。いやなんかもう、怖いってイメージが強い。
人を殴る時も一発一発にめちゃくちゃ重さを感じて、ハッ好き…いや怖い…でも好き…みたいな感情迷子になってしまう。アッシュ?シルバー?の髪色も鮮やかで、見た目からもう「只者ではない感」。そしてそんな威圧感の中から感じるカリスマ性…。和泉さんの佐々木さんはボスの下で淡々とチャンスを狙う参謀って感じがあったんだけど、中さんの佐々木はボス!強い!って印象でよかったなあ。
佐々木はもうラストが最高で、それでこそ悪役〜!と心の中でスタオベ状態。あのラストだからこそ彼は突き抜けて魅力的な外道のままで終われたんだと思います。悪は最後まで悪だから美しい。とにかくめちゃくちゃ印象に残ったキャラクターでした。


澤田さんについてとか、木島のおいしさとか(特にBの山本さんが最早二次元から出てきたみたいだった)、土日限定夕暮れシンちゃんとか、まだまだ語りたいんだけど、これ以上長くなるのもアレなのでとりあえずここまで!

 

個人的なことではあるのですが、今回はほぼぴったり一年ぶりに劇場で推しの舞台を見ました。
劇場で見る舞台は劇中の熱や迫力なんかも勿論なんですが、始まる前の客席の空気感、劇場の雰囲気、更にはチケットを取るところから当日までのわくわく感、終わった後の高揚感までやっぱり非日常で特別すぎる時間で、最高のエンタメだなあと改めて思いました。お家から出ずに見られるオンラインや配信も素晴らしいけど、やっぱり劇場までの道を急ぎながら歩くあのどうしようもなくテンションの上がる瞬間は劇場公演以外では中々得られない。あと劇場の椅子の座り心地な。
現実的に言えばエンタメがなくても人は生きていけるけど、なければまず心が先に死んでしまう。エンタメは、舞台は、心が死なないための薬で延命措置なのだ。そんな風なことを、劇場を訪れてわたしは思い出したのでした。

 

少し前までは当たり前だと思っていたことが、決して当たり前ではないと言うこと。それはこの作品の「明日が地球最後の日」と言うストーリーとも重なる気がして、色々噛み締めてしまいました。当たり前のことなんてない。
「今日は誰かにとって最後の日」まさにそうなんだよなあ。この時間が最後の一瞬になる可能性だってある。終わりはいつも唐突で、そんなものはどこの誰にもわからない。現にいま、世界がこうなってることだって、一体誰が予想出来たと思う?
だからこそ、「また明日」と言える幸せを何度も感じた4日間でした。明日どうなるかなんて誰にもわからなくても、いつだってそう言えるように、そして素敵な明日を迎える為に、1日1日を頑張って生きる。そう思わせてくれた作品に出逢えたことが、とても嬉しいです。また劇場で、わくわくする物語と一緒に皆さんに会えますように!

 

 

──「明日が地球最後の日」なら?
さてどうしよう。出来たら舞台に立つ推しを見たいけど、最後の日に舞台に立ってと言うのはさすがに申し訳ないので、とりあえず、最後にああ楽しかったなと思えるようには生きていけたらなあ。